前回は、5S活動の「清潔」と4点法FMEAの有効性を解説しました。

「清潔」には、「整理、整頓、清掃」の活動の維持する効果と後戻りを
検知する効果がある、でしたね?

また「清潔」は、5Sチェックシートの活用が有効との通説があるが、
自社の現場の「あるべき姿」に当てはめた独自性が無いと期待できる
成果が少ない特徴があります。そこで4点法FMEAの考え方を応用
したチェックシートの活用をお勧めします。

今回は、「躾」の解説をいたします。

5Sの解説書を見ると以下の様に記されています。
「躾」とは、「決めたこと決められたことをいつも守り習慣化すること」です。

突然ですが、現場監督者の皆さんは、「作業者がルール通りの仕事をしてくれない」
と思ったことがありませんか?

世界一勤勉を自負する日本人が、なぜ身近なルールを守らないのでしょうか?
そこには何が影響していると思いますか?

日常生活において守られないルールの代表は、左の標識ではないでしょうか?
この道路標識の意味を知らないドライバーは居ませんよね!
そうです、法定速度が50km/hであることを示しています。

次にこの標識は、如何でしょうか?
この一時停止の標識を「いつも故意に無視している」という人は、居ないと思います。

それでは、この2つの道路標識は、なぜ片方は守られて他方は守られない傾向なのでしょうか?

読者の皆さまと一緒に少し考えてみましょう。

①一時停止違反は目で見て分かってしまうが、速度超過違反は専用の機器で計測
しなければ分からないから、違反が検知される可能性に大きな差があるから。

②速度超過違反の方は、車両の速度計の誤差と取り締まり計測器の誤差が考慮さ
れているので、10%くらいなら超過しても許容される?から。

③少しくらいの速度超過なら事故に即つながらないが、一時停止を無視すると
重大な事故につながる可能性が高いから。

この他にもいろいろなご意見が有ろうかと思いますが、総じて違反者の心の奥底
に「これくらいなら大丈夫だろう」思う根拠のない安心感から来ている様に思います。

それでは、現場管理における違反の発生の要因に目を移してみましょう。

筆者が本現場改善シリーズの第1回と2回で述べた様に標準作業を通じて見つけた
課題を対策して改善することは、標準を発展的に破壊するという変化を伴います
から客観的な
根拠を伴っていれば、標準がコロコロ変わることは大いに歓迎すべきことです。

トヨタの表現を借りれば「昨日のBESTは、今日のBESTとは限らない。」
という様に常に改善が求められる環境において「現状維持は退化」を示している
のです。

躾のまとめ

5S活動の躾は、決めたこと決められたことを守りながら常に課題を探して
自主的・継続的に改善活動に結び付ける習慣のこと。
今回を持って「5S」のシリーズを完結します。

追 記

私が仕事を始めた昭和の時代の人事考課は、「いつも彼は頑張っている」ことを
高く評価していましたが、辛くても我慢して頑張る姿勢は課題を見えづらくして
しまうので。
「俺がんばってる」との自負がさらにそれを助長してしまいます。

今の時代では、この作業は「厄介」だとか「面倒」だとかと思う“楽したがり”を
課題を見つける名人として正当に評価し、周囲が動機づけて改善に結び付ける
積極性を促すことをお勧めします。

記事投稿 甲斐善之助

前職は、半導体メーカーにて装置設計や工程設計を中心に仕事をして参りました。
南アジアでの工場運営を最後の仕事として退職に至り、その後は地元の中小企業の 問題解決に協働で取組む活動を開始して、ちょうど10年が経過しました。「生産性」、「付加価値」、「5S活動」など良く耳にして知っているハズだったけど…
「今さら聞けない○○シリーズ」を連載し、皆様のお役に立ちたいと思っていますので
どうぞご贔屓に!