前回は、5S活動の「清掃」とトヨタ7つのムダの概要を解説しました。

「清掃」は、点検と同じ性質で異常の検知度を高める効果があり、7つのムダの
中でもトヨタが最も嫌うのが「つくり過ぎのムダ」理由は、在庫が増えて七難を
隠してしまうからでしたね?

今回のテーマは「清潔」

5Sの解説書を見ると以下の様に記されています。
「清潔」とは、「整理・整頓・清掃を維持し正常に保つこと」
とても簡単な表現ですが、簡単な表現だからこそ実行に移ろうとした段階で、
どうしたら良いのか様々な迷いが生じます。

解説書には、「清潔」の段階での有効なツールとして「チェックシート」の活用
を勧めていますが、汎用的なチェックシートを入手して自社の活動に適用しても
得られる効果が薄いという落とし穴が待っています。

5S(その1)の項で「5Sは各社に浸透し独自の進化を遂げた」と書きました
が独自性を追求したのには必然性があったからなのです。

言い換えると自社に適応した活動でなければ成果が期待できずに継続できなかっ
たことを表しています。

チェックシートは、点検し易さの面で優れていますが、一方で一覧に記されてい
ない項目は、点検の対象から漏れてしまうという欠点を併せ持っています。

また、1項目毎の評価は、1~5の5段階で点付けをして全項目の合計点が高い
方がより良い、という相対評価なので今回が前回よりも合計点が高かった、低か
ったと一喜一憂したところで経営効果への寄与度が曖昧な状況は、経営者からも
実務者からも納得が得られにくい結果を導いてしまうのかも知れませんね!

上述の様な状況の打開策として筆者がお勧めしたいチェックシートは
4点法FMEAの考え方を現場の問題点の悪さ加減の分析に取り入れた一覧表です。

4点法FMEAの細かな解説は後日いたしますが、最大の特徴は絶対評価ができ
るところです。

4点法FMEA評価の進め方

評価の進め方の概要は、以下の①~⑦です。

①現場を見て「これって正常なのかな?」と思った状況を問題点として列記しま
す。「これは○○だから正常です。」と言い切れない全ての状況が問題点となり
ます。

②上記①で列記した問題点毎に派生し得る問題を可能なだけ多く予測します。

③上記②で予測した問題が周囲に及ぼす影響の大きさを1~4の4段階評価をする。
【影響度】1:影響なし  2:許容範囲内  3:許容範囲外  4:致命的

④上記②で予測した問題の発生を予防するためにどの様な管理がされているのか
を 1~4の4段階評価をする。
【発生頻度】1:完全な管理 2:十分な管理 3:管理不十分 4:無管理

⑤上記②で予測した問題の発生を検知するためにどの様な管理がされているのか
を 1~4の4段階評価をする。
【検知度】1:完全な管理 2:十分な管理 3:管理不十分 4:無管理

⑥影響度、発生頻度、検知度の各度数の積の立方根を演算し危険指数を導く。
【危険指数】RI=(影響度×発生頻度×検知度)^(1/3)

⑦上記⑥のRIの値により、合格、保留、不合格の3段階の絶対評価をする。
合格:RI≦2.0   保留:2.0<RI≦2.3   不合格:2.3<RI
但し、影響度:1の場合に限り、発生頻度:4、検知度:4で危険指数=2.5で
あっても保留と判定する。(理由:周囲に影響を及ぼさないから)

4点法FMEAの考え方が応用できる対象の範囲は、5Sチェックのみならず、
品質管理にも、生産管理にも、在庫(納期)管理にも、労働安全衛生にも万能で
すから、ぜひ自社で一度お試しください。

最後に危険指数(RI)が2.3を超過し不合格判定となった問題点を対象として
2.0以下になる様に対策を講ずることになります。対策の仕方については、改善
活動の管理サイクルPDCAの解説をご参照ください。

【付録】問題って何? 問題点って何?

問題は、設計で狙った機能を果たせなくなること即ち、あるべき姿(求める姿)
と実際に差があることを指します。目標と現状に差が得ることと言い換えても良
いかと思います。
問題点は、問題の発生の仕方を指します。

日常的な具体例をあげると自動車のタイヤは、走行距離に応じて摩耗が進みます
が、この「摩耗する」という現象は問題点に相当し、タイヤの摩耗に伴い舵が効
かなくなるとか、制動距離が伸びてしまうことが問題に相当します。

タイヤの摩耗具合を検知する目的で、スリップサインという溝深さを確認する機
能がタイヤに設けられており、日常点検によりタイヤの使用限界の目安を知るこ
とができます。

清潔のまとめ

5S活動の清潔は、整理・整頓・清掃を繰り返し継続することで、正常を維持し
異常発生を検知する機能が高まる。
今回は、「清潔」までを一区切りとして、次週は「躾」を解説いたします。

記事投稿 甲斐善之助

前職は、半導体メーカーにて装置設計や工程設計を中心に仕事をして参りました。
南アジアでの工場運営を最後の仕事として退職に至り、その後は地元の中小企業の 問題解決に協働で取組む活動を開始して、ちょうど10年が経過しました。「生産性」、「付加価値」、「5S活動」など良く耳にして知っているハズだったけど…
「今さら聞けない○○シリーズ」を連載し、皆様のお役に立ちたいと思っていますので
どうぞご贔屓に!