前回は、5S活動が職場に定着し難い影響度の高い要因と「整理」の解説をしました。

5S活動は準備段階が重要

5Sが職場に定着し難い最大の要因は、5S活動を定期的に実行するということが目的化し、慢性化してしまうことです。5S活動の準備段階で「目的」と「目標」をハッキリさせておき、その目標を達成できたなら当事者が「安全になった」とか「楽になった」を実感できる設定とすることが大事です。

今回は、「整頓」から解説をしていきます。整頓とは、必要なものを必要なときにすぐに使用できるように置き場所、置き方を決めることでしたよね。

前回の「整理」の項では、「必要品だけを現場に残し」「不急品を片付けて」「不要品を処分する」と解説しましたが、現場に残した必要品の置き方を決めて、それを全員に認識してもらい、このルールを自主的に守ることが「整頓」です。

倉庫へ片付けた不急品も同様に整頓をしておき、不急品が必要品となったならば簡単に現場へ持ち込める様な荷姿になっていることが望ましいです。

倉庫で保管している不急品は、時間の経過により不要品として処分の対象に格下げをするルールを作って守ることも重要です。

「少しくらい大丈夫だろう」との思いから整頓のルールを守らなかったことが繰り返されると、やがて倉庫は不急品で溢れ、最悪の場合は倉庫の新設や外部の倉庫を借りるなど価値を生み出す計画がない不急品のために資金の流出を伴ってしまいます。

倉庫保管の価値について

次に置き方の区分を解説します。それでは皆さんにここで質問です。現場に置く必要品と倉庫で保管する不急品とでは、決定的な違いは何でしょうか?

はい、正解です。価値を生む計画が「有るか/無いか」の違いですね!

ここで言う価値とは、付加価値のことを指しています。付加価値を簡単に言うと材料や部品の形状や性質が変わる作業から得られる価値です。

付加価値の具体例を幾つかあげてみましょう。
金属加工:素材を図面通りに削る/溶接する。(寸法測定は価値が増えない)
組立工程:部品を組み合わせてネジ止めする/接着する。
表面処理:塗装やメッキをすることにより対候性を増す。
熱処理:金属素材を高温に加熱して急冷することで性能を増す。食品を加熱することで殺菌する。

まだまだ色々あります。飲食店で食品を調理して器に盛って提供することも、理容室で整髪・洗髪することも、携帯電話利用者に通信ネットワークを提供することも全部が付加価値を得る行為と言えます。

優先すべきは何?

横道に逸れましたが、ここで本題の「整頓」の解説に戻ります。価値を生む現場での必要品の置き方で優先すべきは「使い易さ」です。

使い易い状況は、間違い難くて楽な作業環境と一致し、高品質で高効率な工程設計の実現に高く影響します。

倉庫に保管する不急品の置き方で優先すべきは「収納性」と「識別の容易性」です。「保管で最重要なのは品質の安定じゃないの?」という声も聞こえて来ましたが、そもそも品質が変化するまでの長期間を倉庫で保管すべきではないのです。

整頓のまとめ

5S活動の整頓をすることで仕事が簡単になる楽になるという直接的・短期的効果と整頓を繰り返し継続すると作り込み品質の向上⇒検査の軽減効果や稼働率の向上効果、という中長期的な成果が期待できます。

今回は、「整頓」までを一区切りとして、次回は「清掃」から解説いたします。

記事投稿 甲斐善之助

前職は、半導体メーカーにて装置設計や工程設計を中心に仕事をして参りました。
南アジアでの工場運営を最後の仕事として退職に至り、その後は地元の中小企業の 問題解決に協働で取組む活動を開始して、ちょうど10年が経過しました。「生産性」、「付加価値」、「5S活動」など良く耳にして知っているハズだったけど…
「今さら聞けない○○シリーズ」を連載し、皆様のお役に立ちたいと思っていますので
どうぞご贔屓に!