前回は、付加価値の概要と5S活動の「整頓」を解説しました

付加価値を生む現場の「整頓」は、安全で楽な作業が出来る様に置き方を工夫し、すぐに付加価値を生まない倉庫の「整頓」は、収納性と識別性を重視する、でしたね?

上述の安全で楽な作業は、当事者が望む姿であると同時に作業の効率改善と同じ意味ですから生産性向上に直接的な効果が期待され、経営者からも喜ばれます。

「整理」「整頓」が定着したら次は「清掃」活動の導入です。5Sの教材を見るといつも掃除をしてキレイな状態を保つことの様に書かれていることが多いですが、5S活動の「清掃」は、必要なものについた異常を取除いて正常を保つことです。

これは、「点検」と同様の機能を持ち「清掃」活動が定着しているということは、品質の安定に直接的な効果が期待できます。

トヨダ7つのムダの中に「不良をつくるムダ」がありますが、それでは皆さん「現場で不良を出してしまった」ということは、どれ程の損失を伴っていると思いますか?

材料在庫が有りさえすれば作り直せるので数十分のロスで済むとお思いですか?
不良を作ってしまった損失について具体例を使って解説してみます。

国内の製造業の利益率の平均は4%と言われています。例えば1万円の完成品を1個売って400円の利益が得られるということです。

不良品を1個作ってしまったことは、1万円の販売の機会を逸したことになりますから次の式で表す様に製品25個の付加価値と一致します。

 10,000[円/個]÷ 400[円]= 25[個]

言い換えると25個分がタダ働きになってしまうという影響が不良品に隠れています。

40年以上前から言われてきたトヨタ7つのムダとは、実に的を得ているか思い知らされた感があります。

【清掃のまとめ】

5S活動の清掃は、点検の機能と同じで品質の安定が期待できる。

本日は、「清掃」までを一区切りとして、次週は「清潔」から解説いたします。

【付録:トヨタ7つのムダ】
(1)つくり過ぎのムダ
つくり過ぎると仕掛かり在庫が増え、(5)在庫のムダが生じます。「時間が余っているから」「材料に余裕があるから」と今必要でないモノを作ってしまうと、生産計画や設計の変更で使わなくなることがあります。
(2)手待ちのムダ
自工程で作業するための部品、材料、工具、指示などいずれかが不足で、作業を始められない状態です。待っている時間の労賃が無駄になり、機会損失が生じる可能性があります。
(3)運搬のムダ
製造において真に付加価値を生みだすのは、加工、組立てなどの作業であり、運搬は価値を上げない必要悪の活動ですから、少ないほど短いほど良い訳です。
(4)加工そのもののムダ
価値を生み出すはずの加工だからと言って安心してはいけません。必要な機能を得るために最小限の加工になっていることを、常に確認し続ける必要があります。VE/VAの精神に通じます。
(5)在庫のムダ
在庫品を手に入れるには費用がかかっています。それを眠らせておくことは、使えない現金を倉庫に置いておくことと同じです。また、在庫している間に経時変化で劣化したり、保管や移動、管理に費用がかかります。
(6)動作のムダ
加工のムダに近いもので、探す、屈む、持ち替える、調べるなどの動作は価値を生み出しませんから、工夫してこれらを省く様にする必要があります。
(7)不良をつくるムダ
これはすぐわかりますね。せっかく材料費、加工費をかけて作ったモノが使えなければ、ムダ以外の何物でもありません。作り直すだけでなく、良否選別や不良品の廃棄にも費用がかかります。

7つのムダの中でもトヨタは、「つくり過ぎのムダ」が最悪と言われています。

ナゼだか分かりますか?
「在庫は七難隠す」と言われる様に「つくり過ぎ」によって多方面に悪さが波及してしまうからです。

記事投稿 甲斐善之助

前職は、半導体メーカーにて装置設計や工程設計を中心に仕事をして参りました。
南アジアでの工場運営を最後の仕事として退職に至り、その後は地元の中小企業の 問題解決に協働で取組む活動を開始して、ちょうど10年が経過しました。「生産性」、「付加価値」、「5S活動」など良く耳にして知っているハズだったけど…
「今さら聞けない○○シリーズ」を連載し、皆様のお役に立ちたいと思っていますので
どうぞご贔屓に!