ベトナム・ホーチミン市でコロナ禍の街の様子を目の当たりにします。
街の中心部で、外国人相手に商売をしていた小売店、飲食店、マッサージなどのサービス店などがどんどん潰れています。

中心部は家賃も高く、コロナ禍で外国人の入国を止めているのでお客さんがほとんどいません。
高額の家賃を支払っても、それに見合う収入を得られない店は撤退せざるを得ないのが現実です。

ところがその中で撤退した店舗の後にすぐ入居する企業があります。
それはどちらかというと大企業です。ここ7月、8月には撤退したお店の後に
すき家が入ったり、無印良品が入ったりしました。

多くが撤退を余儀なくされる中で、内部留保がある会社や
金融機関からお金を借りる余力のある会社は
この時期だからこそ、有利な立地で安く買い叩いて開業することができます。

このような経済状況に関しては、ゲームを例に単純化して説明できます。
なぜ二極化するのか、少数の豊かな人と多数の貧しい人に分解していく過程をゲームを使って説明します。

コイン投げのゲームを想像してください。コイン投げは表が出るか裏がでるか確率は二分の一です。
不正がなければ成功する確率と失敗する確率は五分五分と言えます。

ところが最終的な結果は、持ち金が少ない人から、多い人にお金が移動するだけの話になってしまいます。
なぜそうなるかというと金持ちは負けが込んでもゲームを続けることができます。
しかし、金がない人は負けが続くとお金を失い、ゲームに参加できなくなります。

したがってゲームに参加し続けるのは、お金が途切れない人です。
ゲームの場には、ゲームに参加できない人のマネーを少数になったゲーム参加者で取り合うことになります。

これが二極化に進む原理です。
これが金融資本主義の根本原理とも言えます。
グローバル経済の中で金融資本主義が加速していますが
世界はこのような原理で動いていますので、ますます二極化が進むことになります。

トリクルダウンが可能だった時代は、富がどんどん増えていた時代です。
ゲームに負けた人でも何とか資金を確保することができた時代でした。
ところが今はゼロサムゲームです。

一定のマネーの取り合いになってしまっています。
貧しい人の分を富める人が独り占めできる仕組みです。
貧しい人は一旦ゲームから退場すると二度と復活できなくなりました。

現実の経済の中では、お金がある人は投資活動を行い
多少の失敗があっても成功することもあるので、お金を増やすチャンスはたくさんあります。
そのような成功が、次の仕事選びや投資の好循環を招いていきます。

世界でも積極的に投資を進めるGAFAのような企業がどんどん大きくなっています。
その反面、大企業の下請けとなっている中小企業は、大企業の事情で経営事情が急変します。
コロナ禍においては、より一層のコスト削減を求められることもあるでしょう。
他の企業との取引の機会もありませんから、経営はますます厳しくなっています。

そのような強者と弱者を調整するのが税の仕組みです。
特に所得税や法人税はお金がある人から徴収して
弱者に回していくことによって貧しい人の生活を守ることが一定の役割です。

富のある人も貧しい人もみんなが使うことができる社会インフラも重要な柱です。
そのような所得の再配分の考え方が根底にあります。
ただ、昨今は消費税のような全員で負担を分け合うような考え方が強くなってきました。
以前ほど再配分の仕組みは機能しなくなっています。

経済成長期であれば運悪く負けた人であっても
再挑戦に必要な機会や職場を探すことはできました。

新しい産業も増えていた時代でしたので
自分に合った高給を稼ぐことができる仕事を探すことができました。

今日のような成長しない時代には再挑戦の機会も少なくなっています。
まじめに働いても報われないとしたら、だんだん意欲を失うことになりるでしょう。

コイン投げゲームの話をしましたが
必要なのは負けた人が再度ゲームに出られるような再挑戦の仕組みを作ることだと思います。

非正規社員になった人が、非正規から抜け出せなくなるような仕組みを変えることだと思います。
人にチャンスを与える社会の仕組みを何とか作りたいものです。

アイクラフトJPN・ベトナム株式会社(英語表記:iCRAFT JPN VIETNAM Corp.)代表取締役 西田俊哉
高い技術力を持ち、安定・成熟した日本と発展途上であっても、若々しくエネルギーに満ち溢れたベトナム
この両国のそれぞれの力をコラボレーションすることが、両国の発展にとって意味のあるものになっていくものを考えております。
ベトナムの今を、現地の生の声としてお伝えしていきます。