5月、6月の株式市場では株価が連日上昇しています。
アメリカのナスダックも日本の日経平均もコロナ前の水準に回復しています。
感染の終息が見えない中、中国政府の香港政策の問題や米国の黒人暴行死を批判するデモの発生など
経済的なマイナス要因が多いにもかかわらず株高はいったい何を意味しているのか
考えてみたいと思います。

私なりに考えて、一つの要因は大規模な金融緩和によって、マネーがあふれていることです。
もう一つの要因は、株に投資する人々の将来の経済に対する考え方ではないかと思います。
それはいろいろな金融商品の中で結果的に株の方が安全だと考えているのではと思います。
悪条件がそろっている中で、なぜ株が上昇すると考えているのでしょうか?

 今回のコロナは各国が大きな財政出動をするきっかけになりました。
日本でも補正予算が発表されていますが、そんなお金がどうしてあるのかとびっくりするほどです。
以前お話をしたことがありますが、これは赤字国債によって調達することになります。
言い換えれば将来への借金によって賄わるということです。巨額の借金(政府債務)の返済は
どうするのでしょうか?簡単に返済できる金額ではありません。

 借金返済の方法を考えると以下の方法があります。

(1)財政赤字を経済成長による黒字で埋めていく方法
(2)今後の増税や歳出のカットによる返済
(3)債務減免やデフォルトによって解決する方法

(1)については低成長下の先進国、特に日本は人口減少社会になるため経済成長による返済は考えられません。
(2)は社会保障費も年々増加していく中で消費増税のような大幅な増税には国民も耐えられないでしょう。
また、歳出削減も無理だと思います。
(3)については、最悪あり得ますが、外貨準備高も高い日本がデフォルトとなると国際経済にも
重大な影響を与えることになり、また国の信頼性も損なうことになることから
それは避ける措置を取ることでしょう。

(4)民間の利益を公的部門に移転させる方法

(4)がもっともあり得る方法だと思いますが、一般的に民間の利益を強制的に公的部門に
移転させるなどということは人々が許すとは思えません。
でもこれは比較的簡単にできるからくりがあります。政府と中央銀行が連携して対応すれば
それが可能になります。それは政府の債務を貨幣に変換することです。

日銀に黒田総裁が就いてから、異次元の金融緩和という単語が使われるようになりました。
金融機関が持っている国債を日銀が買い入れて、紙幣を発行することによって行われるのが
金融緩和の方法です。

この結果として市場に紙幣があふれることになり、人々がお金を使うようになり
景気を拡大するという考え方です。
ただし、限度を超えると急激なインフレを招くことになります。
急激なインフレが起こると民間の持っていた資金が自動的に公的部門に移転されることになるのです。

 その時の権力を持っている勢力はこのような特権を持っているのです。
日本の歴史上でも徳政令は時々行われました。
元寇の後で巨額の支出に苦しんだ御家人たちに出したのが「永仁の徳政令」で
御家人の借金をチャラにしましたが、それをきっかけに鎌倉幕府の信頼がなくなり
崩壊していくことになりました。

今回の株高の理由は、急激なインフレが発生した場合は株式もそれに伴い上昇することになるので
他の資産で持つよりは結果的には株式の方が安全と考えられているのかもしれません。
巨額の政府債務を帳消しするためには、インフレ政策しかないとしたら、経済について
学習している投資家は、本格的なインフレが起こる前に預金や債券でなく株式などのインフレに
強い金融商品への資金の移動を行っていると考えると悪環境下の株高が説明できるかもしれないと感じています。

記事投稿 西田

アイクラフトJPN・ベトナム株式会社(英語表記:iCRAFT JPN VIETNAM Corp.)代表取締役 西田俊哉
高い技術力を持ち、安定・成熟した日本と発展途上であっても、若々しくエネルギーに満ち溢れたベトナム
この両国のそれぞれの力をコラボレーションすることが、両国の発展にとって意味のあるものになっていくものを考えております。
ベトナムの今を、現地の生の声としてお伝えしていきます。