ある運送業のお客様とのヒアリングの中で

事業を円滑に安全に進めるためには「法令遵守」は重要です。

特に今企業の「コンプライアンス(法令遵守)」違反は徹底的に叩かれます。

しかし、規程の中には勘違いや思い込みで

拡大解釈をしている企業も多く

その事で余計な仕事や合理化が進んでいないケースが多々あります。

今回は、少し具体的に突っ込んで「ISO監査」経験のある筆者が紐解きます。

国土交通省の定める「貨物自動車運送事業輸送安全規則」において
運送事業関係書類は保管期限別に以下の資料作成&保管を義務付けされている。
1)5年
健康診断の記録
2)3年
事故の記録
運転者台帳
乗務員に対する安全教育の記録
3)1年間
点呼記録簿
運転日報
運行記録計
運行指示書
定期点検記録

以上を踏まえて小規模運送業の社長様からの問いかけ

「紙での保管が義務付けられているから手書きでなくてはいけない」
「電子データで作成すると改ざんの可能性が有るから手書きで無いといけない」
「筆跡が違うと監査員に怪しまれる」

「紙での保管が義務付けられているから手書きでなくてはいけない」

内容を理解している方らすると「エッ!!」という内容ですが

これは現場のリアルです。

これは法令を拡大解釈した内容で

ISO国際標準が日本に入り込んだ当時のような堂々巡りをしています。

ここを出来るだけ簡単に紐解きます

先ずは「点呼簿」を例に取り解説します。

「国土交通省」貨物自動車運送事業輸送安全規則
(点呼等)
第七条 貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を開始しようとする運転者に対し、対面(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法。次項において同じ。)により点呼を行い、次に掲げる事項について報告を求め、及び確認を行い、並びに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示をしなければならない。ただし、輸送の安全の確保に関する取組が優良であると認められる営業所において、貨物自動車運送事業者が点呼を行う場合にあっては、当該貨物自動車運送事業者は、対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定めた機器による点呼を行うことができる。
途中割愛
*点呼簿の必要性と実施する内容
以下が記録の保管部分
5 貨物自動車運送事業者は、第一項から第三項までの規定により点呼を行い、報告を求め、確認を行い、及び指示をしたときは、運転者ごとに点呼を行った旨、報告、確認及び指示の内容並びに次に掲げる事項を記録し、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。
一 点呼を行った者及び点呼を受けた運転者の氏名
二 点呼を受けた運転者が乗務する事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示
三 点呼の日時
四 点呼の方法
五 その他必要な事項

「国土交通省」貨物自動車運送事業輸送安全規則

貨物自動車運送事業者は、第一項から第三項までの規定により点呼を行い、報告を求め、確認を行い、及び指示をしたときは、運転者ごとに点呼を行った旨、報告、確認及び指示の内容並びに次に掲げる事項を記録し、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。

ここに尽きます。

「次に掲げる事項を記録し、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。」

重要な部分は

「次に掲げる事項を記録し」
必要な項目を「記録する」としか指示されておりません。

記録に仕方には何も言及しておりません。

手書きであろうがPCでEXCELで入力しようが、Webシステム入力しようが問題有りません。

ここでは

「記録の仕方」では無く、「必要事項を記録として保管する」と言う事です。

なので手書き問題はクリア

「電子データで作成すると改ざんの可能性が有るから手書きで無いといけない」

この解釈も極論です。

「電子だから改ざん出来る」と捉えると現在のすべてを否定してしまいます。

銀行取引、法令規程、電子取引 ・・・

もう一つ深く掘り下げると

法令や監査員は改ざんを取り締まるのが仕事では無く

記載内容に矛盾(労働時間が規程を守っているか?)を確認するのが仕事で

この矛盾があったときにはじめてその部分を指摘し説明を求めたり、おかしな所を暴きます

この段階で改ざんがあった場合に「指摘」になります。

なので、ここで重要なのは「改ざん」では無く「矛盾が無い事」が確認事項です。

これは電子であろうが、手書きで有ろうが何ら違いは有りません。

むしろ、手書きの場合の記載ミスの可能性の方が高い場合もあります。

「筆跡が違うと監査員に怪しまれる」

最後の質問

この背景には以下の内容が含まれます。

点呼簿等のチェックが出来る人は

点呼執行者について
点呼は事業所ごとに選任された運行管理者が行います。選任された運行管理者による
点呼が勤務時間等の理由から完全に実施出来ない場合には、あらかじめ選任された運行
管理者の補助者に点呼の一部を行わせることができます。補助者は社内的な選任で足り
ますが、運行管理規程に補助者としての地位及び職務権限を明記しておかなければなり
ません。
補助者を任命する際は、運行管理者資格者証を取得している者又は国土交通大臣が認
定する講習(基礎講習)の修了者から任命しなければなりません。ただし、補助者に点呼
の一部を行わせる場合であっても、選任されている運行管理者が行う点呼は、月単位で
換算して、総回数の 3 分の 1 以上でなければなりません。

と記されていて

点呼簿管理をいつも記載している「運行管理者」の筆跡で、たまたま不在だった時に

管理者外の事務員が違う筆跡で書くと、監査時に怪しまれる

この様な思考のようです。

良い悪いは別にして、筆跡とやかくで監査員が言うことは有りません

あくまでも監査員は矛盾なく適正に記載されている事が判断基準です。

ここも、参考ひな形フォーマットを見て頂ければわかりますが。

画面クリックで大きくなります

表の横軸(車両毎)に「点呼執行者」を記載又は押印する欄が有ります。

これはこの表に記入した人を確認する内容では無く「点呼自体を私が責任を持って実施しました」

という証です

記載者が違っても記載されている「運行管理者が実施しました」と言えばそれ以上問われる内容では無いです。

もう一つ、票の右上に点呼簿の統括承認の欄が有ります。

表の一行一行の内容に全て「責任者が承認しました」という証が有ることで二重の承認が行われた

・・とは言っても形骸化していますがww

これで書面上では責任を持って実施しましたという証です。

誰ば記載(記入や入力)したかは問われていません、定められた点呼を実施した事実が重要です。

と、ここまでお話しすると多少は理解して頂けたと思います。

これらの内容を理解したうえで合理化システムを開発しております。

「スマート点呼簿」システムを導入して、入力作業自体を効率化しましょう。

ルールには適用していますし、2018年度追加になった 「睡眠不足の状況」も組み込まれております。

先ずは法令の呪縛から少し解き放たれてください。