6月24日(月)私が取材に協力したテレビ朝日「報道ステーション」の特集が放送されました。

そこに出演した方と一緒に日本レストランでその番組を見ていました。内容は米中貿易戦争に絡み、中国からベトナムに工場を移転するケースを取材していました。

BW Industrial社で日本デスクを担当する斉藤様の依頼を受けて、ベトナムで木工製品を製造輸出するジェネレーションパスの岡本社長を私が紹介し取材となったものです。

ただ次の日、ネット上で話題になっていたのは、もう一つのベトナムに関連した番組についてでした。

それは裏番組で放送されていたNHKの「ノーナレ 画面の向こうから」でした。

今治のタオル工場で働くベトナム人技能実習生が、劣悪な労働環境の中で働いている実態を報道するものでした。

1か月の残業時間が少なくとも180時間と過労死が認定される基準の倍近くの残業を余儀なくされており、140時間分の残業代も未払いになっているという内容でした。

「私たちを助けてください」と訴えるベトナム人実習生の様子に、ネット上ではその企業探しに炎上状態でした。

放送では企業名は特定できないですが、日本ではこのようなブラック企業として晒された企業の犯人探しが始まります。

根拠も乏しいのですが、該当企業と思われた企業のバッシングが始まります。

今治のタオルの不買運動をしようという書き込みもありました。

ただこれは氷山の一角であり、このような話はあちこちで発生しているのです。

正義感の強い人たちは、ここぞとばかりそれらの企業をバッシングします。
ただ、問題の本質は企業の問題だけではないように思います。

人を大事にしない企業はあちこちにあります。

本来ならば、やめたければ他の企業に移ればいいのが通常ですが、外国人技能実習生にはそれができません。

なぜできないかというと制度自体が、特定職種以外の従事を認めないこと、原則違う職場への移動は認められていない労働者以外の立場だからです。

その職場に3年間へばりついていなければ目的の収入は得られません。

特別な在留資格に基づいて、日本にいることが認められた人たちですから、厳しく法律で縛られています。

その上に本国のブローカーたちに多額の借金をして日本にわたっていますから、戻されたら多額の負債が残り、親族に迷惑をかけることになります。

現実には一部の実習生や留学生は失踪して姿をくらませています。

アルバイトや職を斡旋するブローカーに手招きされて、職を転々とする人がいます。
長期の仕事は足がつくので、短期の仕事を得るために転々としています。

そのようなことができるのも便利に使う企業もたくさんあるということです。

犯罪的な仕事の一翼を担わされることもあるようです。

このような問題を聞くたびに思うことはあります。

私は制度と目的が乖離していて、実態に合わないことが問題なのではと考えています。
技能実習生とは労働者の扱いではありません。

日本で技術を身につけて、母国でその技術を使い、母国の発展のために寄与するための国際協力活動として採用されている制度です。

勉強に来ている外国人に企業が技術を教えていることになっているのです。

公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)のホームページには次のように書かれています。

「技能実習制度の目的・趣旨は、我が国で培われた技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進です。 」

公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)のホームページより

人づくりを標榜するこの制度の中では、技能実習生は労働者の権利が与えられていません。

技能実習生たちは実態はお金を稼ぎに来ています。またそれを使う企業も低賃金の労働力として考えています。

将来母国で技能を生かすためではありません。

しかし、技能実習の建前のため、他の企業に代わることもできない制度です。

当然転職の自由はありません。そのような建前事態が問題を深めているように思えてなりません。

記事投稿 西田

アイクラフトJPN・ベトナム株式会社(英語表記:iCRAFT JPN VIETNAM Corp.)
代表取締役 西田俊哉

高い技術力を持ち、安定・成熟した日本と発展途上であっても、若々しくエネルギーに満ち溢れたベトナム、この両国のそれぞれの力をコラボレーションすることが、両国の発展にとって意味のあるものになっていくものを考えております。ベトナムの今を、現地の生の声としてお伝えしていきます。