前回は、5Sの概念を解説しました

今回は、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」をいつも通り簡単に一つずつ解説していきます。

ちょっとその前に、「自社で5S(2S)活動を始めたが長続きしなかった」というご経験をされた方も少ないと思います。その背景ある影響度の高い要因は何だと思いますか?

この「5S活動が定着しなかった」に関係性の深いアンケート結果をとあるサイトで見つけたので以下にご紹介します。

  ①  あなたは、5S活動に対してどの様な印象を持っていますか?
1位:仕事に必要なこと(37%)
2位:良い仕事環境づくり(25%)
3位:面倒くさい(13%)
4位:組織風土が良くなる(9%)
5位:しつけ・心構え(5%)

②  あなたは、5S活動にどの様な姿勢で臨んでいますか?
1位:面倒くさい(33%)
2位:業務優先(19%)
3位:苦手(19%)
4位:やらされ感(14%)
5位:目的不明(5%)

5Sの印象は、肯定的な意見が80%超なのに、いざ実行の段階になると全回答が 消極的な姿勢を示していました。

理想と現実に大きな乖離があるこの結果を皆さんは、どの様に捉えましたか?

「5S活動をして、会社は良くなったけど俺たちは負担だけが増えて何も良いことがなかったよ。」という当事者の声が聞こえて来そうですね?

この様な状況では、活動が継続しなかったのは当然の結果です。

おそらく5S活動をするということが目的化してしまい、5S活動に期待する直接的な効果のほんの一部を目標とした結果、即ち活動開始の段階で準備不足であったことが確度高く予想されます。

ではどうすれば良かったのでしょう?

改善活動の管理サイクルPDCAで言ったことの繰り返しになりますが、目的と目標を明確に全員に周知するところからスタートすべきだったのです。

目的:○○のために、 (例)時間外労働をゼロにするために、
目標:△△にする。 (例)設備稼働率を今よりも15%向上させる。

そして大事なことは、活動の当事者が「個人的に使える時間が増えて私生活が充実した」という実感が伴ってこそ意義のある活動になり、継続性が期待できます。

前置きが長くなりましたが、いよいよ本題です。

整理とは、必要なものだけを現場に残し、不急品を片付けて、不要品を処分すること、と論じられています。

ここでは難しいことは、何も求めていない様に一見されますが…、

それでは具体例として、皆さんが日常的に身近でお使いの机の引出しを開けてみましょう。(例ですから工具箱でもバッグでも何でも構いません)

何が見えましたか? いろいろな種類のペンがたくさん入っていますね。

 Q:引出しから赤ペンを1本取ってください。あれっ、なかなか見つかりませんね!
A:しばらく使っていなかったからな~、あっ有った、ハイ赤ペン。

Q:この赤ペンは、あなたの机に入れておく必要があったのですか?
A:使うことがあるから入れておくのだろ!

100円のペンたった1本と思う事勿れ、この金額は消耗品費という経費ですから 利益を圧迫しているのです。

もし従業員全員がいつ使うか分からない物品を各自たくさん持っていたとするならば、それは大きな損失以外の何物でもありません。

 Q:それでは、その赤ペンで何か書いてみてください?
A:おやインクが乾いちゃって使い物になりません!

Q:その赤ペンで何文字くらい書いたか覚えていますか?
A:赤ペンだから文字を書くというより、✔を入れるくらいだから100文字相当にも至らないかな。

何と✔一つに1円の材料費を掛けてしまったことになります。

事務机一つを取った例でもムダが予測されましたが、ムダを見つける範囲の対象を工程や工場全体に拡大するとムダも比例して増えてしまいます。

ムダの中でも一番深刻とされているのが部品や材料を持ちすぎることです。

トヨタ7つのムダの中でも「つくり過ぎのムダ」が最悪と言われています。

財務諸表においては、在庫は資産に区分され、在庫が増えれば資産も増える。材料在庫・仕掛在庫が無ければ加工も組立もできないし、完成在庫がなければ急な注文に応じられないという様に古くから在庫肯定説は蔓延してきました。

材料在庫でも仕掛在庫でも完成在庫でも在庫を持っているということは、買いは立っているけど売りは立っていない状態、これは考えなくても誰もが分かることです。仕入れたことで支払いの義務はあるが、売り上げで回収の目処が立っていないキャッシュフローがマイナスのままで止まっている状態です。

これは一般論ですが、在庫の管理に掛る年間の費用は、在庫金額の25%相当額と言われます。月に直すと2.1%です。

国内の中小企業の利益率の平均は4%ですから、皆さんが大変な苦労して得た利益の半分超が、在庫の負担で水の泡として消え去ってしまうことを身に染みて覚えておいていただきたいと思います。

この積み重ねが不必要な経費を累積させ、延いてはご自身の大切な給料やボーナスが増えない負のスパイラルに徐々に陥っていく素をつくってしまいますからくれぐれもご注意ください。

【整理のまとめ】

5S活動の整理をすることで探すムダがなくなるという直接的・短期的効果と整理を繰り返し継続すると工程や工場の適正在庫にだんだんと近づいてくるという中長期的な成果が期待できます。

本日は、「整理」までを一区切りとして、次週は「整頓」から解説いたします。

記事投稿 甲斐善之助

前職は、半導体メーカーにて装置設計や工程設計を中心に仕事をして参りました。
南アジアでの工場運営を最後の仕事として退職に至り、その後は地元の中小企業の 問題解決に協働で取組む活動を開始して、ちょうど10年が経過しました。「生産性」、「付加価値」、「5S活動」など良く耳にして知っているハズだったけど…
「今さら聞けない○○シリーズ」を連載し、皆様のお役に立ちたいと思っていますので
どうぞご贔屓に!